小説「海賊と呼ばれた男」

小説「海賊と呼ばれた男」

戦後、石油の安定供給に尽力した出光興産の創業者 出光佐三(いでみつさぞう)(1885~1981年)
その生涯をモデルにしたドキュメント小説である。

2012年7月に刊行され上下巻で計80万部のベストセラー。



2013年本屋大賞 百田尚樹さんの「海賊とよばれた男」が受賞(13/04/10)


"いま書かなければならないと思った。とにかくいまの日本人に彼の生き方をみてもらいたい。それだけ。"

著者ある百田尚記(ひゃくたなおき)氏のコメント







二年前のある日、テレビ関係の友人と雑談している時、「日章丸事件って知ってる?」と訊かれました。知らないと答える私に、彼女が概要を説明してくれたのですが、それは俄かには信じられない事件でした。いまだ戦争の痛手から立ち直れないでいた昭和28年、「七人の魔女」と呼ばれる強大な力を持つ国際石油メジャーと大英帝国を敵に回して、堂々と渡り合い、世界をあっと言わせた「日章丸」というタンカーがあったというのです。
興味を抱いた私は早速調べてみましたが、事件の全貌を知るにつれ、驚愕すると同時に震えが止まらなくなりました。そこには現代の日本人が忘れかけている「勇気」「誇り」「闘志」そして「義」の心を持った男たちの姿があったからです。しかしそれ以上に私を驚かせたことがありました。それは、そんな男たちを率いた一人の気骨ある経営者の人生です。その九十五年の生涯はまさしく凄絶としか言いようのないものでした。
――なんという凄い男がいたんや!
私は「この男を書きたい!」と心から思いました。いや――書かねばならない!この素晴らしい男を一人でも多くの日本人に知ってもらいたい!それが作家としての使命だ。
気が付けば、取り憑かれたようにワープロに向かっていました。小説家になって六年、執筆しながらこれほどの充実感を覚えたことはありません。
この作品は「小説」という形を取っていますが、登場人物はすべて実在しました。そしてここに描かれた出来事は本当にあったことです。この奇跡のような英雄たちの物語が、一人でも多くの日本人に届くことを心から願っています。

「日本人が自信を失っている中、生きるすばらしさを伝えたい」という強い想いから書いた小説。


百田尚記氏はこの小説を書き上げる途中、実は3回、病院に運ばれている。

ある日、突然これまで体験したことのないような激痛に襲われ、病院に運ばれた。
検査の結果が出た。胆石発作だった。一刻も早く手術しなければ、大変なことになると医者に告げられた。手術をすれば、一週間は執筆が出来ない。
百田氏は書くことを選んだ。
痛みに耐えながら、その間に2回、病院に運ばれた。
ついに入院、手術をすることになった。
百田氏は暗闇の明かりの中、看護士にみつからないように小説を書き続けた。

とにかくこの男を、一人でも多くの人たちに知ってもらいたい

その一心だった。


「海賊と呼ばれた男」上巻あらすじ

「ならん、ひとりの馘首もならん!」--異端の石油会社「国岡商店」を率いる国岡鐵造は、戦争でなにもかもを失い残ったのは借金のみ。そのうえ大手石油会社から排斥され売る油もない。しかし国岡商店は社員ひとりたりとも解雇せず、旧海軍の残油浚いなどで糊口をしのぎながら、逞しく再生していく。20世紀の産業を興し、人を狂わせ、戦争の火種となった巨大エネルギー・石油。その石油を武器に変えて世界と闘った男とは--出光興産の創業者・出光佐三をモデルにしたノンフィクション・ノベル、『永遠の0』の作者・百田尚樹氏畢生の大作その前編。


「海賊と呼ばれた男」下巻あらすじ
敵は七人の魔女(セブン・シスターズ)、待ち構えるのは英国海軍。敗戦後、日本の石油エネルギーを牛耳ったのは、巨大国際石油資本「メジャー」たちだった。日系石油会社はつぎつぎとメジャーに蹂躙される。一方、世界一の埋蔵量を誇る油田をメジャーのひとつアングロ・イラニアン社(現BP)に支配されていたイランは、国有化を宣言したため、国際的に孤立し、経済封鎖で追いつめられる。イギリスはペルシャ湾に軍艦を派遣。両国の緊張が走る一触即発の海域に向けて、一隻の日本のタンカー「日章丸」が極秘裏に神戸港から出港した――。世界を驚倒させた「日章丸事件」に材をとった、圧倒的感動の歴史経済小説、ここに完結。「この作品は『小説』という形をとっていますが、登場人物はすべて実在しました。そしてここに描かれた出来事は本当にあったことです。この奇跡のような英雄たちの物語が、一人でも多くの日本人に届くことを心から願っています」(百田尚樹)